上司の愚痴アプリ

上司の愚痴を吐き出せるアプリが提供されたそうで。

そういうアプリを利用して,上司の愚痴を書き込んで本当に大丈夫なのかなと,ちょっと気になって調べたことを備忘録的に書きます。

関係ありそうな判例メモ

○インターネット上の掲示板(2ちゃんねる)に書き込んだケース(日本)

元従業員がハンドルネームを用いて,「不当解雇」というスレッドをたてて,解雇した企業について「休日がほとんどない」「いきなりの解雇通知を出され,サインをしろと恫喝された」等を書き込み,さらに役員個人の批判をした事件では,元従業員は名誉を毀損するつもりはなく,愚痴をこぼすような軽い気持ちで書いたと主張したが,裁判所は,そのような気持ちだとしても違法性が阻却されるわけではなく,名誉毀損不法行為が成立していると判断して,元従業員に対して会社に100万円,役員2名に対してそれぞれ30万円の損害賠償の支払いを命じている(東京地判平成14年9月2日)。

○自分のHPでインタビュー先の実名を書いたり,会社を批判する内容を書いたケース(日本)

日本経済新聞社事件

取材源及び取材過程を公開することは新聞社の業務に支障を来すこと,それは従業員にもわかっていること,さらにHPの全面閉鎖という上司の命令は行き過ぎでも,問題のある箇所を修正するどころか,更に追記をして公開に至っていることは就業規則違反である。また,新聞社を「悪魔」とか「邪悪な企業」と書くことは新聞社の信用を害するものであり,流言してはならないという就業規則違反がある。よって14日間の出勤停止処分は不相当ではない。

○日本でSNSFacebookTwitter)に関する訴訟はまだない?今後に注目。

海外では…

フェイスブックに上司の悪口を書き込んだケース(オーストラリア)

2011年08月21日 18:54 AFP BBNewsより引用

オーストラリアの労使問題の裁決機関、フェア・ワーク・オーストラリア(Fair Work Australia、FWA)は、米SNSフェイスブックFacebook)に上司に対する暴言を書き込んだことを理由に解雇されたのは不当だとする豪男性の訴えを退け、解雇は正当との判断を下した。

…(中略)

閲覧設定では、同僚11人がこのコメントを読むことができた。そのため、FWAの裁決官は、オキーフさんの行動には深刻な職務規程違反があったとして、解雇不当の訴えを退けた。

 裁決官は「コメントが自宅のパソコンから、勤務時間外に書き込まれたという事実は重要ではない」と述べ、「コメントを同僚が読むことができ、コメントのことは上司の耳にすぐに届いた」と指摘。解雇は正当で、「私の見解では、自宅と職場という区分はかつてほど明白なものではなくなった」と付け加えた。

フェイスブックに上司の悪口を書き込んだケース(アメリカ)

米国全国労働関係局(NLRB) v. American Medical Response of Connecticut

(AMR 社)事件

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)ポリシー・ガイドラインの策定と企業の実務対応について (11頁)

上司の愚痴を書き込んだ女性が解雇された事件で,最終的には和解で終了。企業が定めていたSNSポリシーの改善等が和解内容に盛り込まれた。

なお,この裁判例以外にもSNSポリシー策定の具体例とか,きちんと読んでおこうと思った。

また,上記のケースについて,ソーシャルメディアポリシーを修正するにあたって詳細な解説を掲載したブログがありました。hrm partners,inc.が書かれている「ソーシャルメディアポリシーとNLRB」がとてもわかり易かった。